
生産管理システム 食品の選び方と導入実務
食品製造/工場/生産
2026.07.06
生産管理システム 食品の選び方と導入実務
食品向けの生産管理システムは配合(レシピ)、ロット・賞味期限、トレーサビリティを実務的に束ねる基盤であり、企画段階でマスタ要件・連携方式・段階導入・TCOを確定すると、開発コストと運用リスクを大幅に抑えつつ上市スピードを高められます。
- レシピ・品目・原材料・中間品の必須マスタ項目を設計し、マスタ整備に要する日数と担当工数を見積もる
- 既存ERP/WMS/MESとのデータオーナー(どのシステムが正データか)と連携方式(API/CSV/バッチ)を定義する
- スモールスタートで優先する機能(ロット・賞味期限・トレーサビリティ・実績収集等)の優先順位を決め、パイロット検証範囲を設計する
- TCO試算にライセンス・初期設定・マスタ移行・保守・教育・現場入力時間の増減・帳票改修を含めて作成する
- ベンダー比較の評価基準を明文化し(ロット逆引き時間、帳票改修の柔軟性、ERP連携可否、スマホ入力可否など)、合格ラインを設定する
食品向け生産管理システムが担う役割を、商品開発と製造の接続で捉える

食品向け生産管理システムは、レシピ(配合)・ロット・賞味期限・トレーサビリティを一元管理することで、企画段階でマスタと連携方針を確定すれば量産移管の手戻り・品質事故・廃棄コストを抑えられます。
- レシピと品目マスタに「版数・適用日・代替原料フラグ・歩留まり」を必須項目として設計する
- 既存ERP/WMSとのデータオーナーを決め、API/CSVなど連携方式と同期ルールを文書化する
- 導入はロット・期限・トレーサビリティを優先するスモールスタートを採り、マスタ移行の工数を見積もる
食品向け生産管理システムは、配合・賞味期限・ロットを前提にQCDを回す基盤です
配合が変更されれば原価、歩留まり、工程指示、表示(アレルゲン・原産地)すべてに波及するため、レシピは「設計レシピ(開発)」と「製造レシピ(運用)」の双方を想定して管理する必要があります。実務判断の肝は、どの情報を開発側が持ち、どの情報を製造側で補完するかを決める点です。たとえば限定品で原料を代替する場合は、開発レシピに代替許容条件と期待歩留まりを必ず登録し、製造現場の作業指示には『代替使用時の調整指示』を自動出力する仕組みを用意します。この振る舞いをマスタで定義しておけば、SKU増加による現場負荷を抑えつつ企画の多様化に対応できます。
商品企画段階でシステム要件を意識すると、量産移管の手戻りを減らせます
企画段階で要求すべきは「表示用の材料分解」「最小生産ロット」「想定賞味期限と安全マージン」の3点です。判断基準としては、①その配合で法表示・アレルゲン表示を自動生成できるか、②代替原料使用時の製品差(味・歩留まり・原価)をシステム上で算出できるか、③想定ロットで倉庫・ラインが回せるか、の順に確認します。落とし穴は『開発が試作でのみ有効な表現を使う』ことなので、開発段階からQAと設備担当を要件定義会に入れ、パイロット生産時に必ずシステム入力→完成実績登録まで検証する運用を決めてください。
食品メーカーで追うべきKPIは、在庫回転だけでなく期限ロスと回収対応速度です
在庫回転率に加えて、期限切迫在庫比率、廃棄率(賞味期限起因)、および回収発生時のロット追跡時間を設定すると、システム導入効果が経営層に伝わりやすくなります。トレーサビリティはフォワード(出荷追跡)とバックトレース(原料起点の遡及)を両方サポートすることが必要で、どの時点のデータを保存するか(受入/投入/完成)が設計の分岐点になります。出典:食品ITnavi(内田洋行IT)
これらの観点を押さえることで、次の段階で求められる機能一覧と優先度がぶれずに決められます。
食品業界で必須になりやすい機能を、業務課題別に見極める

食品メーカーが優先すべき機能は「トレーサビリティ/賞味期限管理」「レシピ(配合)マスタと版管理」「生産計画と購買連携」「HACCP・品質記録の電子化」「原価・副産物管理」の5領域に集約され、各機能は企画・開発の可否や原価試算、上市リードタイムに直結します。
- トレーサビリティは「どの時点のデータを持つか」を決め、逆引き時間をKPIにする
- レシピマスタには版数・代替ルール・歩留まり・被覆量など商品設計で使う属性を入れる
- 生産計画は最小製造ロットとリードタイムを基に所要量計算の前提を固める
トレーサビリティと賞味期限管理は、回収対応と出荷精度を左右する判断基準です
判断基準は「どのタイミングでロットを割るか」と「データ保存の粒度」です。受入ロットだけで管理するのか、投入(ラインでの実投入)や完成(製品ロット)まで結び付けるかで、回収時の追跡時間と現場負荷が大きく変わります。実務上は受入→投入→完成の3点を最低限つなげ、ロット逆引き時間(目標:1時間以内)を要件に入れると現場も評価しやすくなります。賞味期限管理は先入先出(FIFO)だけでなく、期限別引当や出荷地点での期限チェック機能の有無が重要です。限定品や短サイクル商品のSKU増加が予定される場合は、期限別ロケーション管理や期限優先ピッキングの有無をベンダーに確認してください。
レシピマスタと配合版数管理は、具体的なマスタ属性を入れることで現場の再現性を高めます
具体例として、被覆・衣の量や「被覆の目的(かさ増し/タレ保持)」をマスタ属性に入れることで、仕様変更時の評価と指示出力が一貫します。篠原シェフの知見に基づくと、冷凍中華では衣や粉の量が味をぼかす要因になりうるため、被覆量を数値項目として登録し、代替原料や製造条件(解凍指示、加熱条件)との紐付けを行うと品質差の原因分析が容易になります(TasteLink Journalの取材記事)。TasteLink Journalの取材記事 マスタに「版数」「適用開始日」「代替可否」「想定歩留まり」「被覆量」を入れておけば、開発レシピ→製造レシピの変換と比較検証が自動化でき、量産での手戻りを削減できます。ただし被覆削減は歩留まりや物流衝撃(崩れやすさ)に影響するため、ライン稼働条件と原価影響を必ず並列で評価してください。
生産計画・所要量計算・購買連携は、最小製造ロットとリードタイムを前提に決めるのが実務判断です
意思決定の基準は「所要量計算が実製造単位を尊重できるか」。売上計画ベースで必要量が出ても、実工場では最小ロットやバッチ換算(個数⇄重量)が存在するため、システムが自動で換算・端数処理できるかを確認します。季節商品や販促連動ではバッファ在庫ルールを明確にし、購買側に自動発注トリガーが出せるか検証してください。小規模拠点ではフルMRPが過剰となることが多いので、まずは所要量算出→購買提案のワークフロー化で運用を固める段階導入が現実的です。
HACCP記録・品質記録の電子化は、入力負荷を抑える設計が成功の鍵です
落とし穴は「全てを電子化して現場負荷が増え、形式運用になる」ことです。優先順位は重要管理点(CCP)と回収リスクの高い記録に置き、その他の定期記録は簡易入力か自動収集(センサー連携)で補います。現場の負担を抑えるためにモバイルUIの項目数を絞り、逸脱時のみ詳細入力を求める運用にすると定着しやすくなります。IoT連携は有効ですが、センサー導入・保守コストとデータ品質管理体制を事前に見積もることが必要です。
原価管理と副産物管理では、コスト配分方法を事前に決めることが選定基準です
実務上の判断基準は「副産物の原価配分ルールをシステムで再現できるか」。連産製造では完成品ごとに按分方法(歩留まりベース、重量比など)を選べることが重要です。新商品企画では配合変更時の原価試算が即座に出せると意思決定が速くなりますし、副産物を別商品として販売する場合の収益シミュレーションも必須です。価格戦略や既存SKUとのカニバリを見越した採算判断は、導入前に用意したサンプル配合での原価比較を複数パターン試算して示すと説得力が増します。
これらの機能要件を基に、優先度をつけた機能チェックリストと段階的導入計画を作ると、選定・交渉・パイロット検証がぶれずに進みます。
自社に合うシステムを選ぶには、機能比較より運用設計を先に固める
システム選定は機能の比較より「現場でどう運用するか」を先に固めると成功確率が上がり、要件定義・見積・パイロットの手戻りを大幅に削減できます。
- 現場で標準化する業務(品目コード/配合版の取り扱い/期限引当)を明文化する
- 既存ERP/WMS等とのデータオーナーを決め、同期ルール(どちらが正データか)を定める
- 規模・工程ごとに最低限必要な初期機能を決め、段階導入のスコープを設計する
選定の起点は「何をなくしたいか」ではなく「何を標準化したいか」です
判断基準は「社内で一貫して参照する単一の業務定義が作れるか」です。具体的には品目コードの粒度(原材料は原材料コード、産地ごとの分離が必要か)、レシピの版管理ルール、入出庫の期限優先ルールを文書化します。実務上は『標準化する項目』を10〜15個程度に絞り、それを満たすかをベンダー評価の最初の合格基準にすると評価のブレがなくなります。また、現場での例外運用(小ロット調整や代替原料の場当たり運用)をどこまで許容するかをあらかじめ決めると、試験導入での揉め事を減らせます。
ERP・販売管理・WMS・MESとの接続要件を先に洗うと、導入失敗を防げます
重要なのは「データの真源(システム上の正データ)」を定めることです。発注データはERPが正か、生産実績はMESが正か、在庫残はWMSが正かを業務で合意しておくと、運用開始後の二重入力や帳尻合わせを防げます。接続方式はAPIが望ましい一方で、既存システムの制約でCSV運用になるケースも多く、その場合のバッチ時間やエラー復旧ルールを契約仕様に盛り込みます。テスト時には必ず『マスタ同期→受注→製造指示→完成登録→出荷』の一本線でデータフローを通して検証してください。
クラウド・オンプレ・パッケージの違いは、現場の変更耐性で判断します
クラウドは短期導入と拠点追加の容易さ、オンプレはカスタマイズ性とデータ統制が強みです。判断基準は「今後のSKU増加・帳票変更頻度・多拠点展開の予定」。SKUや帳票変更が多い場合はクラウド(カスタマイズ余地のあるSaaS)か、プラグインで帳票を素早く改修できる製品を選ぶと運用コストが下がります。現場側ではUI変更や業務フロー変更への抵抗があるため、導入後の変更耐性(現場教育や設定変更の容易さ)を見積もることが重要です。
規模別の推奨構成を持つと、過剰投資と機能不足の両方を避けられます
判断の軸は「初期投資」「現場負荷」「拡張性」。小規模工場はロット・期限・出荷検品を中心としたクラウド構成でスモールスタート、中堅はMRPと原価連携を組み込んだモジュール型、大手はERP統合+複数工場横断管理が前提になります。提案資料には必ず「初期フェーズの機能一覧」と「フェーズ2以降で追加する機能」を明記し、ステークホルダー(開発・製造・品質・IT)の合意を得たうえでベンダーに見積りを依頼してください。
ここまで固めた運用設計を要件に落とし込めば、ベンダー比較やパイロット検証が判断基準に沿って進められます。
導入前に詰めるべきマスタ整備とスモールスタート設計

マスタは最小限の4層(品目/原料/中間品/レシピ)を速やかに整備し、スモールスタートで「回収リスク・期限管理・実績収集」を優先すると稼働初期の混乱と手戻りを抑えられます。
- 品目・原料・中間品・レシピの必須項目をテンプレ化してマスタ整備工数を見積もる
- 開発レシピと製造レシピの役割分担(表示用/運用用)を明確にし、変換ルールを定義する
- 初期フェーズで優先する機能(ロット・賞味期限・トレーサビリティ・実績収集)を限定して段階導入する
マスタ整備は、品目・原料・中間品・レシピの4層で最小限から始めるのが現実的です
実務判断は「最初に誰が何を入力するか」を決めることです。品目マスタは商品・半製品・包材で区分し、原料マスタには原産地・規格・アレルゲン・ロット管理可否を入れます。中間品は“在庫にするか否か”でコード化を決め、レシピは開発用と製造用で必須項目を最小化して別管理するのが現場負荷を下げる王道です。現場でありがちな失敗は項目を過剰に増やしてマスタ作成が止まることなので、まずは必須10〜15項目に絞り、残項目はフェーズ2で追加する運用を採用してください。
開発レシピと製造レシピをどうつなぐかで、商品改廃の速さが変わります
判断基準は「表示・再現性・生産性のどれを優先するか」を明文化することです。開発レシピは消費者表示や味の再現を優先する“設計レシピ”、製造レシピは投入順・歩留まり・ライン条件を優先する“運用レシピ”として分離し、双方をリンクさせる変換テンプレを用意します。標準化レシピの考え方を導入すると、誰が作っても再現できる品質が得られます(食材を標準化レシピに当てはめて流す手法はミールキットや冷凍食品で有効です)。詳細はTasteLink Journalの取材記事を参照してください。TasteLink Journal(取材記事)
スモールスタートは「在庫だけ」ではなく回収リスクの高い機能を優先すべきです
落とし穴は在庫管理だけを優先して回収トレースや期限管理が後回しになることです。被害発生時のブランド影響を最小化するため、初期フェーズではロット逆引き、フォワードトレース、期限別引当、出荷時検品を必須にします。これにより、万が一の回収対応時間を短縮でき、経営層に示す導入効果(ブランドリスク低減)も出しやすくなります。工場によっては追跡精度向上に短期のハード投資が必要なため、スモールスタートでの優先度と費用を見える化しておくことが回避策です。
導入スケジュールは、要件定義より現場検証と教育に十分な時間を確保してください
具体的には要件定義→マスタ構築→パイロット(1ラインまたは1品目)→評価→本稼働の流れで、パイロットに最低2週間〜1か月の実稼働期間を設けると問題露見・修正が現実的に行えます。教育は一度に全員へではなく、パイロットメンバーを“トレーナー化”して現場内での横展開を進めると入力精度と定着率が高まります。導入初期に残る例外運用はログ化して運用ルールに組み込むプロセスを用意すると、運用安定化が早くなります。
これらを前提にマスタテンプレと初期フェーズの機能優先順位を固めると、ベンダー提案の比較が実務的に行えます。
費用対効果をどう示すかで、社内提案の通りやすさが変わる

投資判断で有効なのは「導入費用だけでなく運用負荷と事故回避効果を一年単位で比較し、開発スピードやブランドリスク低減を定量化して示す」ことです。
- 初期費用・保守・マスタ移行・教育・現場入力時間の増減を含むTCOを見積もる
- 効果は在庫削減だけでなく期限ロス・回収対応時間短縮・配合変更の意思決定速度で積み上げる
- 提案資料は守り(事故回避)と攻め(上市スピード・SKU対応)の双方で費用便益を示す
費用は初期導入費だけでなく、保守・教育・運用工数まで見て判断します
見積りはライセンス・導入設定に止めず、マスタ移行工数、帳票改修費、端末費、保守(年額)、現場教育工数とその代替コストまで含めた年間TCOで提示します。比較表では「初期投資」「年次保守」「初年度の人的コスト増分」を列化し、現行運用と対比してください。特にマスタ移行と教育工数は見積りのばらつき要因になりやすいので、担当者別の作業日数を仮置きして見積根拠を明示すると説得力が増します。
ROIは在庫削減だけでなく、期限ロス・回収対応・原価差異の縮小で組み立てます
ROIを在庫削減だけで見せると社内で評価が低くなりがちです。代わりに「廃棄削減による原料費低減」「回収対応に要する時間短縮によるブランド毀損リスク低減(想定損失回避)」「配合変更の意思決定短縮による上市機会の早期化」を合算します。実務では現状の廃棄量、回収件数とその平均対応コスト、配合変更に要する平均日数を社内データで拾い、簡易試算シートに落とし込むと数値の裏付けが取れます。投資対効果は年単位で示すと経営層に響きやすいです。
提案資料では、事故予防効果と売上機会損失の回避を同時に示すと通りやすいです
経営は守りの投資だけでなく成長への寄与も求めるため、提案には両面を必ず入れます。守り側は「回収対応時間が短縮されれば想定損失が○%低下する」といったシナリオ、攻め側は「配合変更や限定品の立ち上げがX日短縮されれば追加販売機会が見込める」といった機会価値を提示します。提示時は楽観・現実・悲観の3ケースで見せると合意形成が進みやすいです。
ベンダー比較は、5段階評価より『自社で絶対外せない条件』の明文化が先です
比較表作成前に自社の不変要件(例:ロット逆引き時間1時間以内、帳票改修は内製で対応可能か、ERPとのリアルタイム同期の可否)を明記してください。評価はまず合否基準でふるいにかけ、次にコスト・導入期間・サポート体制で差を付けると判断が速くなります。合否基準は必ず数字や運用条件で書く(例:同期バッチは30分以内、帳票改修は最短2週間)ことでベンダー比較の結果がブレません。
これらを揃えた提案は、次の技術要件定義とパイロット設計へスムーズに接続できます。
導入事例から学ぶ、食品メーカーで成果が出やすい進め方
成果が出るのは、課題の優先順位を明確にして現場で試験運用し、数値化した効果を経営に示して段階拡張する進め方です。
- 初期は回収リスクと期限ロス削減を最優先にし、パイロットで現場負荷を検証する
- レシピとマスタの共通言語を整備し、開発→製造の変換テンプレを用意する
- 定着指標(入力定着率・例外発生率・ロット逆引き時間)を設定して継続改善する
期限管理で成果が出る企業は、SKU整理と販売計画精度の見直しを同時に進めています
実務上の判断基準は、システム導入で「何を減らすか(不良在庫・期限ロス)」と「何を改善するか(需要予測精度)」を同時に示せるかです。運用面では売れ筋・死に筋のスクリーニングを行い、SKUごとに適正在庫ルールと棚置き優先度を設定します。短サイクル商品や限定品が多い場合は、販促カレンダーと連動した製造トリガーを作り、ピッキング・出荷で期限優先のロケーション管理を実装してください。効果測定は期限切迫在庫比率と賞味期限起因の廃棄率で行い、パイロット期間中にこれらが改善するかを最低1〜3ヵ月で確認します。
レシピ管理で成果が出る企業は、開発・製造・品質保証の用語を統一しています
具体例は、開発レシピ(設計)と製造レシピ(運用)を分け、変換ルールをマスタ化することです。マスタには代替原料の可否、想定歩留まり、投入順、被覆量など商品設計で必要な属性を盛り込み、開発側が変更した際に製造影響を自動で算出できる仕組みを作ります。この「誰が作っても再現できる」設計思想は、ミールキットや冷凍食品の現場で再現率向上に効きます—具現化の手法や事例はTasteLink Journalの取材記事でも紹介されています。TasteLink Journal(取材記事) こうした共通言語があると、配合変更時の判断が速くなり、上市リードタイムの短縮につながります。
現場定着に失敗する企業は、入力負荷と教育設計を軽視しがちです
落とし穴は「機能を全部入れて現場の入力項目が増える」ことです。実務的な回避策は、入力項目をKPIに紐づけて優先度を付け、パイロットで現場が実際に入力できるかを検証すること。目安としては日常入力項目を5〜8項目程度に絞り、例外時のみ詳細項目を表示するUI設計を推奨します。教育は“トレーナー方式”で段階展開し、初期ログを週次でレビューして入力ルールを修正する運用を組むと定着が早まります。
商品開発部門が関与すると、システム導入は守りから攻めの投資に変わります
判断基準は、導入後に開発側がどれだけ迅速に配合差分の採算と製造可否を判定できるかです。実務では配合変更の意思決定時間を導入前後で比較し、短縮分を上市機会の価値に換算して提示します。例えば配合決定が数週短縮されれば販促や季節需要に乗せられる可能性が増え、提案の説得力が高まります。企画側はその試算(時間短縮×期待売上)を資料に組み込み、守りの効果と併せて提示してください。
こうした事例的な実務ノウハウを整理できれば、ベンダー選定やパイロット設計の意思決定がより実務寄りに進みます。
よくあるQ&A
- 導入にかかる費用感(初期/保守)はどの程度見積もるべきですか?
- 初期費用だけでなく、マスタ移行・帳票改修・教育・保守を含めたTCO(年間コスト)で判断するのが正解です。 見積り作成時は(1)ライセンス/サブスク料、(2)導入設定・カスタマイズ費、(3)マスタ移行工数(担当者別日数換算)、(4)初期教育と社内トレーナー育成コスト、(5)年間保守・運用費を項目化して合算してください。ベンダー見積は項目ごとに内訳を出させ、想定の感度(教育日数が±○日でどう変わるか)も示すと意思決定が速くなります。
- 導入スケジュールとマスタ整備に必要な工数の目安は?
- フェーズ分け(要件定義→マスタ整備→パイロット→本稼働)で、マスタ整備は最小限項目であれば数週間〜数か月、全社完全整備は数か月〜半年程度を想定します。 実務では「必須項目10〜15」を最初に決め、各品目ごとに担当者が入力する日数を仮置きして総工数を算出します。パイロットは1ライン・1品目で2〜4週間の実稼働検証期間を確保し、そこで発見されたマスタ補正を本格展開前に反映してください。
- 既存のERP/WMS/MESとどう繋げればよいですか?実装の注意点は?
- 先に「データの真源(どのシステムを正データとするか)」を社内合意してから、同期方式(API/リアルタイム、CSV/バッチ)を決めるのが最重要です。 実装上の落とし穴はマスタの不一致とタイムラグで、特に品目コードやロットの粒度が異なると二重入力や突合作業が残ります。API連携が可能ならリアルタイム整合を目指し、難しい場合は同期バッチの時間・エラー復旧フローを仕様に明記してください。出典:ITトレンド
- 小規模工場のスモールスタートは何から始めるべきですか?
- 回収リスクと期限管理、実績収集(ラインからの完成登録)を優先して導入し、原価や高度なMRPはフェーズ2に回すのが現実的です。 小規模ではフル機能は過剰投資になりやすいため、クラウド/SaaS型でロット管理・賞味期限・出荷検品・簡易所要量の機能を最初に押さえ、運用が安定したら原価・副産物管理やERP連携を段階的に追加してください。出典:Boxil
- ベンダー比較で必ず入れるべき定量評価軸は何ですか?
- 合否基準(Must):ロット逆引き時間、帳票改修の最短所要日数、ERP同期可否、スマホ入力可否を明文化し、次にコスト・導入期間・サポート体制で順位付けします。 具体的に「ロット逆引きは1時間以内」「帳票改修は標準で2週間以内対応」など数字基準を合否にすると、提案比較がぶれません。加えてパイロットでの稼働確認結果(入力工数、例外率)を評価に含めると導入後のギャップが減ります。
- 導入後の運用体制(権限設計・教育・保守)はどう整えればよいですか?
- 現場リーダーをトレーナー化する「段階教育」と、マスタ保守の責任者を明確にする運用を設けると定着が早いです。 権限は「誰がマスタ編集できるか」「誰が例外処理を承認するか」を職掌レベルで定め、教育はパイロット→横展開のトレーナー方式、保守はベンダーと自社保守の範囲をSLAで合意してください。初期3ヶ月は週次レビューで改善点を吸い上げる運用が有効です。
- IoT/MESやライン機器との連携は具体的に何が必要ですか?
- 必要なのはセンサーからのデータ取り込み(温度・ライン稼働・投入実績)を受けるデータ層と、異常時のアラート・データ補正ルールです。 実装ではまず「どのデータを自動取得するか」を絞り、センサーの通信方式(PLC、OPC-UA、MQTT等)とデータフォーマットを統一します。コストや保守性を考え、すべてを自動化せずに重要監視点のみ自動化する段階設計を推奨します。出典:ITトレンド
- 輸出先や海外取引で必要なトレーサビリティ要件はどう違いますか?
- 国やバイヤーによって義務や期待する追跡粒度が異なるため、対象市場の要件を早期に確認してマスタに反映する必要があります。 例としてEUや米国では追跡・表示要件が厳しいケースがあり、原産地・ロット単位での記録保存や遡及可能性が求められることがあります。国際取引を想定する場合はコーデックス委員会や取引先の要求仕様を確認しておいてください。出典:食品ITnavi(内田洋行IT)
- 投資効果(ROI)はどの指標で組み立てれば説得力が出ますか?
- 在庫削減だけでなく、期限ロス削減による原料費低減、回収対応時間短縮による想定損失回避、配合変更の意思決定短縮による上市機会の早期化を合算して示すと説得力があります。 実務では現状の廃棄量・回収件数・配合変更の平均日数を収集し、改善シナリオ(楽観・現実・悲観)で年間効果を試算します。試算は経営向けに年次ベースで示すと意思決定が得やすくなります。
「おいしい」を「売れる」へ。食のプロの知見を、商品開発に。
TasteLinkの「ChefDeck」は、ミシュランシェフをはじめとする食のプロの知見とAIを組み合わせ、商品アイデアからレシピ・仕様・原価のたたき、販促案までの一次案を数分で提案するサービスです。「差別化が難しい」「試作がなかなか進まない」「社内を説得する根拠が足りない」——そんな商品企画・開発の現場を、根拠つきの開発資料でうしろから支えます。